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認知症の相続人がいる場合
認知症の相続人がいる
家庭裁判所に後見開始と成年後見人選任の審判を申立てて、選任された成年後見人が代理人となって遺産分割協議をします。
ただし、成年後見人に共同相続人が選任された場合、これらの者も相続人であり利害が対立することになります。この場合、さらに特別代理人の選任を家庭裁判所に申し立てる必要があります(民法860条)。
なお、成年後見監督人が選任されていれば、成年後見監督人が代理人になります(民法851条4号)。
成年後見制度
成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などによって自分で物事を判断する能力(事理弁識能力)が不十分な人を保護するための制度です。 これらの人が単独で物事を判断、実行しようとすると、他人が勝手に話を進めて本人の意志に関係なく財産を処分してしまったり、都合の良いように物事を処理してしまったりする可能性があります。 そこでこれらの人に後見人等を付け、一定の法律行為を行うときには後見人等の同意が必要になるように行動に制限をかけることで、認知症等になっている人が不利益を被らないようにしようとするものです。 成年後見制度では「任意後見制度」と「法定後見制度」の二種類があります。
任意後見制度
本人の意志能力があるときに後見人となる人を自ら選任して、判断能力が衰えたときに財産管理等をしてもらうための「任意後見契約」を締結し、判断能力が衰えた時点で任意後見契約に基づいた代理権を後見人に付与する委任契約の制度
法定後見制度
意志能力が失われた人に対して、本人や親族等が家庭裁判所に申立を行い、不利益を被らないようにするために法律上で定められた後見人を選任してもらい、後見人等が本人に代わって法律行為をしたり同意を与えることで、本人の権利や財産を保護する制度 相続手続きで意志能力が失われている相続人がいる場合は「法定後見制度」を利用します。 法定後見制度では、後見人が必要な人の状態に応じて「補助」「保佐」「後見」の三種類に分けられます。このうち、どの種類に該当するかは医師による診察結果等によって決まります。
「後見」 相続人の判断能力がまったくない場合
日本人である故人の財産に、外国の不動産があるというケースを考えてみましょう。 故人は日本人で、被相続人の本国法により行なわれることになるので、基準になる法律は日本の民法になります。
「保佐」 相続人の判断能力がまったくないわけではないが、著しく不十分な場合
家庭裁判所に保佐開始と保佐人選任の審判を申立てて、選任された保佐人の同意を得て本人が分割協議をするか、または、遺産分割協議について保佐人に代理権を与える審判を受けて、保佐人が代理人として遺産分割協議をします。
ただし、保佐人に共同相続人が選任された場合、これらの者も相続人であり利害が対立することになります。この場合、さらに臨時保佐人の選任を家庭裁判所に申し立てる必要があります。
なお、保佐監督人が選任されていれば、保佐監督人が代理人になります(民法876条の2第3項)。
「補助」 相続人の判断能力喪失の程度が軽度である場合
家庭裁判所に補助開始と補助人選任と補助人に遺産分割協議についての同意権付与の審判を申立てて、選任された補助人の同意を得て本人が分割協議をするか、または、遺産分割協議について補助人に代理権を与える審判を受けて、補助人が代理人として遺産分割協議をします。
ただし、補助人に共同相続人が選任された場合、これらの者も相続人であり利害が対立することになります。この場合、さらに臨時補助人の選任を家庭裁判所に申し立てる必要があります。
なお、補助監督人が選任されていれば、補助監督人が代理人になります(民法876条の7第3項)。
意志能力のない相続人がいるときの手続きの流れ
相続において問題になるのは、相続人の中に認知症等で物事を理解・判断することができない相続人がいる場合ですが、このときに必要な手続きの流れは次のようになります。
意志能力が失われている相続人に法定後見人をつけるために、家庭裁判所で「後見開始の審判」手続きを行い後見人(成年後見人)を選任してもらう
選任された成年後見人が意志能力が失われている相続人の代理人となり、他の相続人との遺産分割協議に参加する
遺産分割協議がまとまったら遺産分割協議書を作成し、その内容に応じて遺産の名義変更等の手続きを行う(手続きに必要な署名等についても成年後見人が代理して行う)
気をつけなければいけないのは、意志能力が失われている相続人が不利益になってしまう内容の遺産分割協議をすることは認められません。
成年後見人は、意志能力が失われている相続人が不利益にならないように法定相続分程度の遺産を相続するように他の相続人と協議し調整していきます。
注意点
上記のとおり、相続人の中に認知症の配偶者や障がいをもつ子がいる場合、遺産分割協議を行うのは大変です。
このような場合には、遺言書を作成しておくと、遺産分割協議をすることなく、遺言どおりに遺産を分割することができます。
たとえば、認知証や障害のある方の面倒を見てもらうことを条件に遺贈をする、負担付遺贈をすることなどが考えられます。
遺言書の活用をぜひご検討してみてください。